沖縄の海のそばで暮らしていると、もはや台風はある意味毎年恒例のイベント、夏祭りのような感覚でもある。それは来るもの。だって夏だから。といった感じで、ある意味自動的に予定に組み込まれている。
実際、人間にとっては夏祭りのように手放しではしゃぐ類のイベントではないけれど、自然界にとってはまさにお祭りそのものだ。台風によって海底に沈んだ海の栄養分が撹拌され、その栄養分が様々な生物に行き渡り、自然の生態系を保ってくれる。まさに待ってました!のハレのイベントなのだ。
しかし、今回のタイフーンハギビスは大きかった。
自然界でも人間界でも、日々あらゆる場所で「通常」が続々と更新されている。今年の台風はほとんど沖縄(本島)を通らなかったのもびっくりしたけど、通常は通らない所を通ったのにもびっくりした。「昨日の常識は今日の非常識」そんな今日この頃。
それより何より、今回のこのスーパータイフーンでわたしが1番びっくりしたのは、”地球温暖化についての報道がほぼない@ニッポン” ということ。あまりにびっくりしたので、色んな所のニュースを探ってみたが、語られるのは被害の大きさとウン10年前の過去の台風の記録くらいで、日本語で「温暖化」という文字はほっとんど見当たらなかった。
世界最大級の台風と言いながら、その原因についての解析や考察は?
「通常」ではないことがたくさん起きて、あらゆることが「想定を超えていた」のなら、それを踏まえた上での今後の対策&防災は?
そういった当然といえば当然の疑問や懸念、議論すべきトピックを提案してこその報道だろうし、ましてやG7、そしてパリ協定の参加国ではあるわけだから、ここまで「温暖化」の文字が出てこないのも流石に不自然ではないだろうか。もしかしたらニッポンでは「温暖化」が放送禁止用語にでも指定されているのだろうか?ならば一体誰が?なんのために?それともとある国の大統領が「温暖化なんてないし」と言っている通り、この未曾有の台風は温暖化とは全く関係ないのだろうか?
疑問は膨らむばかりだが、そんな時はやはり自分で調べるに限る。何事も勉強、リサーチだ。まずは、「台風ってどうして起こるの?」という夏休み子ども科学電話相談的な、シンプルかつプリンシパルな疑問から。
ところで、こういった「子どもの素朴なギモン」は、一見無邪気で無害風を装いつつ、往々にして世界トップレベルの科学者たちすら実は答えられないということが明らかになるというその意味で、究極的に「科学とは何か」を考えるきっかけになる素晴らしい発射ボタンである。
では、現時点でわかっている台風のメカニズムとは?
台風は大きな渦巻き状の雲のことで、通常雲は海から蒸発した水から生まれる。台風になるような大きな雲が発生するのは蒸発する水の量が多いということ。だから、海水温が高くなればなれば蒸発する水の量が増えるので、気温や海水温が上がるほど台風は発生しやすくなる。そして、海水温や雲の動きは海流や大気の流れに影響されるので、それらの条件を合わせて、台風の大きさや進路、雨の量などが決まる。
ということは、台風と地球の温度はとても関係がある。むしろ因果関係といってもいいほどだ。さらに、海や空には線や壁などで仕切られているわけではないので、地球のどこかで起きていることは、別のどこかでも必ず何かしらの影響がある。と考えると、やっぱり温暖化は全然他人事ではないし、むしろ我々はスーパータイフーンの当事者である。
そして、当事者中の当事者である島のパイセンたちはたくましい。島の人々、島の猫たち、島の植物などのみなさんは、不必要に慌てることもなければ楽観して気を抜くこともない。淡々と備え、淡々とやり過ごす。そして被害がどれだけ大きくてもただ淡々と復旧する。当然、復旧できないものだってある。それでも、淡々と平常心で生活に戻る。生活を続けていく。
大きな災害の時には特に、そんなアティチュードが結局のところ1番役に立つ。海のそばの集落は台風が来るたび、停電や断水や冠水や倒木など何かしらが起こる。例え無事であったとしても、辺り一面砂まみれに潮まみれになる。植物は枯れるし、家の塗装は剥がれるし、車だって錆びる。
それでも毎度毎度、台風が過ぎ去った後は潮が乾く前にさっさと洗い流し、壊れたものを直し、手が必要な人がいれば誰ともなくお互いに助け合って復旧作業をする。猫師匠たちはそれを妨害したり、じゃれてきたりと協力に余念がない。
そもそもそんな面倒なことはなければいいのかもしれないが、それが地球という星の営みである。地球では台風も地震も津波も洪水も、いつだって起こり得るのだ。その上で、できることとできないことを知り、できることがあるのならやり、できないことであれば受け入れる。言葉にすると当たり前のことに思えるけれど、意外と当たり前は当たり前ではないようだ。大きな災害が起きた時、ふとそんなことを思う。
ちなみに、台風一過のその風景は、わたしが好きな島の風景の1つでもある。台風もすごいが、パイセンたちもまた、すごいのだ。
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